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生活福祉資金貸付を通した自立支援の取り組み

2025.09.10 掲載

 生活福祉資金貸付制度は、戦後の混乱期、生活困窮者や高齢者、障害者などへの支援が社会的課題となるなか、民生委員活動が「土台」となり、地域福祉を基盤にした自立支援策として開始されました。
 低所得世帯の子どもたちが進学や就学を継続できるよう支援するための「教育支援資金」は、子どもたちの将来と世帯の自立を支える「伴走型支援」としての機能が期待されています。
 今回は、安芸太田町社会福祉協議会(以下、安芸太田町社協(あきおおたちょうしゃきょう))と借り入れ世帯の事例を通して、「社協だからできる自立支援とは何か」を考えます。

生活福祉資金の貸し付け相談が世帯とつながるきっかけに

 佐藤清さん(仮称)は、県外の大学への進学費用として、1996年に教育支援資金の借り入れを行いました。1990年代は、子どもではなく、生計中心者が、子どもにかわってお金を借りており、父親の佐藤弘さん(仮称)が借りたものです。
 無事に進学した清さんでしたが、その後、大学を途中退学し、県外で就職をしていることがわかりました。途中退学の場合、お金を一括で返すことが、定められていますが、父親の弘さんには一括で返す余裕はありませんでした。
 安芸太田町社協の担当者と民生委員と本会職員が定期的に自宅を訪問し、これから先の佐藤さん世帯の生活や清さん自身のことについて、話し合いを重ねてきましたが、状況は改善されず、お金も返せないままとなっていました。
 お金を借りてから10年が経過したころ、清さんは、就労先で体調を崩し、仕事をやめて、安芸太田町の自宅に戻ってきていました。しかし、清さんは、自宅に戻ってから就労しておらず、自営業を手伝うこともなかったため、顔を合わせることのないまま月日が流れていきました。
 また、父親の弘さんも、お金を返せていないことを清さんには伝えておらず、安芸太田町社協としても関与しにくく、世帯との関わりが途絶えていた期間もありました。

生活福祉資金の担当者と、借り入れ世帯との関わり

 安芸太田町社協の横山係長が、生活福祉資金貸付の担当になったのは、2023年。
 佐藤さん世帯がお金を借りてから27年が経過していました。すでに償還期限を過ぎており、延滞利子も発生していました。
 横山係長と佐藤さん世帯との直接的な関わりはありませんでしたが、地域の一員として、民生委員や地域住民が、日頃から佐藤さん世帯を気にかけており、社協職員とも共有していました。
 ある日、民生委員から横山係長へ、父親の弘さんが救急搬送され、清さんが付きそわれたとの情報提供がありました。その後、弘さんは無事に退院できましたが、地域住民は、弘さんが高齢となり、自営業の継続や世帯の生活がますます苦しくなるのではないかと気にかけていました。
 そこで、横山係長は生活福祉資金の返済のことは伝えず、まずは社協職員として、父親の弘さんに顔と名前を覚えてもらうことを目標に、定期的な訪問を続けました。
 「何かあった時に、相談してもらえるよう、まずは、信頼してもらわないと。相談されてなんぼなんで」と横山係長が話されるとおり、時間はかかりましたが、弘さんから、お金のことや清さんのことが聞けるようになりました。

気にかけてくれる地域の人とのつながり

 清さんが、自宅に戻ってきてから20年近く経過していましたが、就労していなかったこともあり、買い物以外では外出する機会もなく、社会から孤立している状態となっていました。
 清さんについては、父親の弘さんだけでなく、横山係長や民生委員、地域住民も気になっていました。
 そのような状況のなか、買い物に出かけた清さんに、声をかけた男性がいました。
 その男性は、地元の福祉施設で、施設長として働いていた清さんの同級生でした。
 就労意欲がなかったわけではなく、きっかけがなかった清さんは、同級生と再会し、同級生から「仕事してないんなら、うちのところで働きや」と、声をかけてもらったことがきっかけで、福祉施設の職員として働くことになりました。 
 社会から孤立している状態と思われた清さんですが、清さんのことを気にかけてくれる地域の人とのつながりはあったのです。
 また、安芸太田町社協は、民生委員や地域住民だけでなく、地域の福祉施設や企業等ともつながりが深く、就労支援においてもそのつながりを活かして支援することができます。
 地域に安心して働くことができる場所をつくることも自立支援の一つとして取り組まれています。
 そして、清さんが就労し、収入が安定したことから、生活福祉資金の返済のことを、弘さんだけでなく、清さんとも話せるようになりました。現在は、父親の弘さんに代わって、清さん自身が、教育支援資金を返済されています。

社協だからできる自立支援とは

 横山係長は、生活福祉資金貸付事業の担当になってから、年末の挨拶をするために、お金を借りている世帯を訪問されています。
 「わしのこと覚えといてくれたんじゃの」と言われたときには、人とつながり続けることの大切さを実感されているそうです。生活福祉資金の貸し付けによる支援は、『経済的な自立』だけに着目しがちですが、経済的な自立だけでなく、その人なりの『自立』のゴール設定を一緒に考え、年月の経過とともに、その人の物語が蓄積されていくなかで、ゴール設定を見直したり、変更しながら支援することが大切です。
 「社協職員だけでなく、地域の民生委員や住民が借り入れ世帯につながり続けることができるのが、社協だからできる自立支援かもしれないですね」と横山係長は語ります。

写真:住民との関係を深めることを意識して相談対応される横山係長

つながり続けることをめざした自立支援

 清さんが、一歩を踏み出すきっかけになったのは、自分のことを気にかけてくれる、地域の人とのつながりでした。
 生活福祉資金貸付は、行政をはじめ、必要な支援につながりにくい世帯とつながるきっかけになることが多くあります。世帯と地域がつながり続けることで、世帯が地域で自立した生活を送ることができるよう、これからも社協だからできる自立支援に取り組んでいきます。

お問合せ先

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ファクス:082-252-2133
受付時間:平日8時30分~17時30分
 ※土日祝日・年末年始(12月29日~1月3日)は、お問合せフォームで受け付けます。
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