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子どもたちが「ただいま」と言える 新しい居場所のカタチ

2026.03.10 掲載

 「子どもたちが安心して遊べる場所をつくりたい―」、そんな住民の声がカタチになりました。府中町で生まれた新しい子どもの居場所「そうじゃフレンド」。大人が「何をするかを決めない」ことで育まれる子どもたちの自主性や、年齢も立場も「ごちゃまぜ」になって笑い合う風景の中に、地域共生社会へのヒントがありました。地域住民の思いと、府中町社会福祉協議会(以下、府中町社協)のバックアップが生み出した取り組みを紹介します。

1.放課後の公園にあふれる「子どもたちの笑顔」

 府中町の府中北小学校区。毎週水曜日の放課後になると、総社会館と隣接する総社公園には、子どもたちの明るい笑顔があふれます。ここで活動しているのは、地域住民が運営する子どもの居場所「そうじゃフレンド(通称:そうフレ)」です。名前は、会場である「総社会館」と、誰もが親しみやすい「フレンド」を組み合わせて名付けられました。令和7年9月にスタートした活動は、平均して約30人、多いときには40人を超える子どもたちが集まる、地域の新しい拠点へと成長しています。

写真:ある放課後の風景(外遊び)

写真:ある放課後の風景(外遊び)

2.住民の“あったらいいなの声”がカタチになるまで

 「そうじゃフレンド」が誕生したきっかけは、府中町社協が令和6年から実施している「まちづくり座談会」でした。この座談会は、住民が課題を出し合い、具体的なアクションを共に考える場として、町内の小学校区ごとに設けられたものです。
 府中町の中でも、特に府中北小学校区は子どもが安心して遊べる場所が少ない地域で、座談会の中では、「子どもたちが放課後に安心して過ごせる場所がない」という切実な課題が浮き彫りになりました。
 そうじゃフレンド代表の中村竜也さんは、町内会長からの誘いで座談会に参加した一人でした。「最初は隅で様子だけ見ようかなという軽い気持ちでした」と振り返る中村さんですが、「子ども好き」や「もともと地域活動に興味があった」こともあり、話し合いを重ねるうちに、いつのまにか活動の中心メンバーとなっていました。中村さんの背中を押したのは、長年地域で紙芝居の読み聞かせ活動を続けてきた母親の姿でした。地域に根ざした活動を間近で見てきたからこそ、「自分にできることを」という思いが形になったのです。

3.「子育ては地域で」が合言葉!子どもの自主性を大切にした居場所

 そうじゃフレンドでは、大人があらかじめプログラムを用意し、「今日はこれをしよう」と指示をすることはありません。何をして遊ぶかは、子どもたちが自分で決めています。
 ある日の活動では、ボールや折り紙、ハサミ、のりといった道具のほか、松ぼっくりやトイレットペーパーの芯といった廃材や自然素材が置かれました。ある子どもは、松ぼっくりとトイレットペーパーの芯に毛糸を巻き付け、独創的なクリスマスツリーを作りました。大人が教えすぎず、見守ることで、子どもたちの自由な発想を引き出します。
 運営メンバーは親しみを込めて「フレンド」と呼ばれ、いつも肯定的な声かけで子どもたちに寄り添います。PTA関係者、主任児童委員、コミュニティナース、そして地元のボランティアなど、約10人の多様な立場の人が「フレンド」として関わっています。
 そうじゃフレンドは、子どもの自主性や社会性を育みながら、「子育ては地域で」を合言葉に、忙しい家庭の子育ても地域で支え合い、世代を越えてつながれる、あたたかな交流の場をめざしています。

写真:ある放課後の風景(工作の様子)

写真:ある放課後の風景(工作の様子)

4.若い世代が「これなら参加したい」と思えるしくみ

 県内各地では地域活動の「担い手不足」が問題となっている中、そうじゃフレンドには子育て世代や現役世代が自然と集まっています。そこには、誰でも参加しやすい「3つのポイント」があると考えます。

○「子どもたちのために!」で集まる
 「地域のために」というと少し身構えてしまいますが、「子どもを応援する」という目的は、世代を問わず多くの人の原動力になります。子どもの笑顔やエネルギーにふれることで、大人自身も元気をもらえたり、あたたかい気持ちになれる。そこが活動の魅力になっています。

○気軽に、緩やかに参加できる!
 「役員だから参加しなければならない」という義務感ではなく、「自分の子を遊ばせるついでに手伝う」「参加できるときに参加する」など気軽に関わることができます。また、大人が先生役となって何かを教える必要もなく、「ただ一緒にいる(見守る)だけでいい」「活動のルールを厳密に定めず、自分たちで作っていく」といった気軽さが、参加しやすさにつながっています。

○活動を分かりやすく伝える!
 Instagram等のSNSを活用し、活動の様子を分かりやすく発信しています。楽しそうな雰囲気を多くの人に知ってもらうことで、活動に興味を持った人が「これなら自分もできそう」と、安心して参加できる土壌ができています。

5.誰もが安心して参加できる居場所に

 活動を続ける中で、地域ならではの、あたたかな化学変化が起き始めています。その象徴的なエピソードとして、不登校気味だった子どもがそうじゃフレンドに顔を出すようになり、そこで見せた子どもの笑顔に保護者が感動して涙する場面がありました。その保護者からは「自分も活動を手伝いたい」と申し出があり、継続して参加するようになりました。また、車椅子で参加する地域住民と子どもたちとの交流も生まれています。子どもたちは、回を重ねるごとに、なついて駆け寄るようになりました。車椅子の膝の上に子どもを乗せたり、一緒に笑い合ったり、そこには「子どもの遊び場」以上の価値が芽生えています。
 今後の展望として、中村代表は「活動を継続していくことが大事。将来的には、府中町のすべての小学校区に、こうした拠点ができてほしい」と意気込みを語ります。さらに、高校生ボランティアの継続的な関わりなど、より若い世代を巻き込んだ活動への発展も期待されています。
 その居場所のめざす姿は、子どもも、高齢者も、障がいのある人も、地域で孤立している人も、ふらりと立ち寄り、ありのままの自分を受け入れてもらえるような「居心地のよい場所」です。地域の人が子どもを見守り、不登校の子どもが自分の居場所を見つけ、子育てに悩む親がほっと息をつく。そんな「支え合い」の居場所が広がっています。

写真:そうじゃフレンド代表 中村竜也さん

写真:そうじゃフレンド代表 中村竜也さん

6.支え合いは、小さな「やってみたい」から動き出す

 広島県社会福祉協議会(以下、本会)では、令和6年度からの2年間、「地域支え合いネットワーク強化事業」で府中町社協と協働しながら、取り組みを見守ってきました。
 「そうじゃフレンド」の活動が教えてくれたのは、地域を良くする力は、地域住民の「あったらいいな」という思いの中にあるということです。世代や立場を越えて、日常の中に、気に掛けあい、笑いあえる、そんなあたたかな居場所が、孤独や孤立を防ぐ何よりのセーフティネットにつながります。本会はこれからも、こうした地域住民の思いを大切に、支え合いの地域づくりを応援し、その意義や魅力を伝えていきます。

関連ファイル

子どもたちが「ただいま」と言える 新しい居場所のカタチ(2026年3月)(別タブで開きます)

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