地域の総合的な権利擁護支援体制の強化に向けて
2022.02.10 掲載
成年後見制度利用促進について
平成28年5月に施行された「成年後見制度の利用の促進に関する法律」において,市町は「成年後見制度利用促進基本計画(平成29 年3 月24 日閣議決定)」を勘案して,当該市町区域における成年後見制度の利用の促進に関する施策について,基本的な計画を定めることや,中核となる機関の設置等に係る支援,その他の必要な措置を講ずるよう努めることとされています。
広島県内では,呉市,福山市,広島市が中核機関を設置しています。中核機関の設置により,地域の関係機関が連携し協働する「地域連携ネットワーク」を強化し,地域内の権利擁護・成年後見に関する課題に対応するためのしくみを整備することをめざしています。
成年後見利用促進体制整備事業「市町研修会」を開催しました
本会では,令和2年度より,県から「成年後見利用促進体制整備事業」の委託を受け,市町の中核機関の設置を支援しています。
昨年度に引き続き令和3年10月から12月に,広島県内を家庭裁判所の管轄区域で4ブロックにわけ,行政,社協関係者を対象にした研修会を開催しました。家庭裁判所の各支部からも参加いただきました。
コロナ禍で集合型の研修会の実施が難しくなっているなか,集合型で研修会を実施することができ,積極的な意見交換,情報共有の場となりました。
広島県では,平成12年度から福祉サービス利用援助事業を全市町で実施しており,また法人後見事業も19市町/23市町で実施されるなど,社協や地域包括支援センター等が中心になり,すでに地域の権利擁護支援に取り組んでいることから,なかなか中核機関の設置に至っていないのが現状です。
「社協がやっているから」「それぞれの機関がやっているから」ではなく,社協や地域の支援機関が実施している取り組みを地域の権利擁護支援のしくみとして整備していくことが重要になります。
研修会では,すでに令和2年度から中核機関の取り組みをスタートさせている呉市と福山市の実践を参考に,講師の松谷恵子社会福祉士の助言を得ながら,各市町の現状や今後の取り組みを整理しました。
呉市も福山市も社協が中核機関を受託していますが,呉市社協も福山市社協も,中核機関の受託前から権利擁護センターを運営していたことから,社協の権利擁護支援の取り組みもあわせてご報告いただける機会となりました。
中核機関の設置に向け,本研修で学んだポイントについて,参加者のアンケートをもとに振り返ります。
自分たちの市町の取り組みイメージを具体化していくこと
・実際に立ちあげられた市町の事例を聞き,イメージがわきやすかった。
・具体的な実践例をベースにした研修でわかりやすかった。イメージができないことで思考を放棄してしまわないよう,権利擁護が必要な人に最適な支援が行えるしくみ,ネットワークづくりに繋げたいと思った。
☆他市町の取り組みも参考にしながら,自分たちの市町の地域性や現状を整理し,イメージを具体化していくことが取り組みの第一歩となります。
既存の取り組みをどう活用していくか市町の関係機関で協議・共有する
・限られたマンパワーをどう活用するか,既存のものをどう活用していくかが鍵のように思えた。
・継続できるシステムをつくることが難しいが,今あるシステムを活用し,検討していきたい。
・既存の制度・資源を活用し,少しずつ進めていくことが必要だと思った。
・行政や関係機関と協議を重ねて,中核機関をどのように推進していくか,しっかりと決めていかないといけないと感じた。
・「中核機関は機能の寄せ集め」とてもしっくりきた。
・連携をしっかり確立させていくことで,担当者レベルで感じているであろう負担感,不安がやわらぎ,成年後見制度のひろがりをめざせるように感じた。
☆何とかなっているではなく,社会情勢の変化とともに,これからも増加が見込まれる権利擁護支援を適切に行うための地域連携ネットワーク,既存の取り組みが継続できるシステムをつくっていくことが必要となります。
行政と社協との連携の強化
・「行政と社協の得手・不得手を理解したうえで,どう連携していくかが大切」という言葉があり,とても勉強になった。
・お互いメリットがあるような進め方をしていきたいと思う。
・行政との委託事務のやりとりは経験上「丸投げ」が多かったことを何とか改善したく,ともに汗をかけるよう働きかけを行った。今は共に汗をかきながら進めている。
☆呉市,福山市においても,行政と社協が十分にコミュニケーションをとりながら一緒にすすめていく姿勢がありました。それぞれの役割や得意なこと,不得意なことを認識し,理解して連携を強化していくことが重要となります。
まずは,やってみる
・行政・社協の連携や,まずはやってみるというフットワークを軽くすることの大切さが分かった。
・「これは行政がやること」「これは社協にやってもらわないといけない」ではなく,お互いの得意なところを利用し,フットワークを軽くやっていくことが大切だと感じました。
・今もっている役割を整理することはなかなか…ですが,やらないといけない!今ある資源をうまく活用し,とりあえずやる!という市と相互のやる気が必要だと感じた。
本研修では,実践報告や情報交換において,特に,呉市,福山市の行政・社協担当者の「まずは,やってみよう!」という前向きな姿勢が印象的でした。
誰かが動かないと始まらない,動きながら協力者を巻き込んでいく,取り組みを強化していく個の力,個の力を組織の力につなげていくことの重要さを感じることができました。
本会は,市町が「やってみよう!」と思える情報の提供や場づくり,「やってみよう!」という市町の後押しができるよう,引き続き取り組みを進めていきます。